雇用、貨幣および公共事業の一般研究
第17章 公共事業
これまで景気を刺激するため、さまざまな公共事業に多額の税金が支払われてきた。
しかし、どれだけ税金を投入しても、
もう公共事業による景気対策は万策尽きたかのようである。
その遠因として3つの側面がある。
第1に、公共事業自体が、新たな産業を産まずに景気を刺激しないことである。
人口が右肩上がりで、各地に住宅が必要となる環境であれば、
道路や上下水道、さまざまなインフラの公共事業を行うことで、景気を刺激することができる。
しかし、人口が減少する世界では、新たなインフラ整備の必要性が減少し、
それよりも、老朽化した過去のインフラの整備のほうが緊急性が高くなる。
過去のインフラの整備は必要だが、それでは新たな景気を刺激しない。
第2に、高度に生産効率がアップしたおかげで、公共事業を行っても、
それによる影響の範囲が狭くなったことである。
ひと昔まえなら、ダムを作るのに10年かかり、のべ10万人の雇用が生まれたが、
現在の技術力で同規模なら、5年で1万人程度で作れてしまう。
公共事業の効果を考えるなら、これまで以上の大規模にする必要がある。
第3に、すでに食料、衣料、住宅などのモノがあふれ、
金額的に買えるかどうかは別として、とりあえず必要なモノはなんでも手に入る。
さらに、日常生活で必要なものは、すでに必要以上に持っているのである。
その証拠に、自然災害等で住宅や街が破壊され多くの住民が避難するような時に、
日本中から、支援物資、食料や衣類などがあっという間に集まってしまう事実がある。
この現状をみると、どれだけモノがあり余っているのかを実感できるだろう。
このような環境では、
消費性向を上向かせるだけのモノやサービスを作り出すこと自体が難しくなる。
一部のニッチな分野では景気が刺激されても社会全体には至らない。
そこで、これまでと異なるあらたな公共事業の可能性を考察する。
海外に広大な土地を借りて、そこにリゾート地を建設する。
分かり易くするために、具体例で説明する。
インドネシアの海沿いの土地100平方キロメートルを借りる。
そこに空港と港湾施設、警察、消防、病院を建設し、ホテル等のリゾート施設を民間から誘致する。
その地区を仮に西亜村と名付ける。
西亜村とインドネシアの間には国境を設け、西亜村内は日本の行政区として運用し、日本が自治権を有する。
西亜村は日本国であるため、日本本土との往来のために空港は必須である。
日本は、インドネシアに対しODA援助を打ち切る。
その代わりに、下記の支払いを行う。
1.西亜村の土地の賃貸料
2.西亜村で使用する電気水道などの公共料金
3.西亜村のリゾート地で働くインドネシア人に対する給料
西亜村の位置
西亜村は単なるリゾート地ではない、
日本のエネルギー政策にとって重要な石油航路の安全を守るための砦でである。
そのため、マラッカ海峡近辺の土地に設定する。
そして港湾施設を建設し、自衛隊を駐屯させる。
自衛隊の海外派兵は、憲法問題も含めて非常に繊細な問題である。
しかし、ホルムズ海峡近辺に日本国の土地があれば、
そこを防衛するために自衛隊が駐屯することは、専守防衛の理念からはずれない。
西亜村の事業
西亜村の建設は公共事業である。
西亜村への往来は海外旅行のようでいて国内旅行である。
日本語が通用し、日本の警察が守る西亜村への観光は、
その他の海外旅行と比べても、簡単かつ安心な旅行となる。
日本の原風景とは全く異なる国内旅行を実現することで、
航空業界、ホテル業界、おみやげ業界、さまざまな業界へ
新しい事業を生み出す起爆剤となりうる。
西亜村の役割
西亜村の建設は日本とインドネシアとの友好関係の象徴となる。
これまで日本は、資金援助をおこない現地のインフラをつくることで、
周辺国との友好関係、信頼関係を築いてきた。
しかし橋を作ったり、井戸を掘ったりするだけでは、援助としては不十分である。
橋の建設が終わればおしまい、発電所をつくればおしまい。
それでは真の友好関係は築けない。
それよりも、人とお金の交流が続く仕組みを作ることが両国にとって重要である。
西亜村の建設により、日本はシーレーンの防衛と、リゾート地の産業創出を手に入れ、
インドネシアは現地人の雇用と賃借料を手にできるのである
このように、西亜村は、景気対策の公共事業にとどまらない。
日本の安全保障、外交、国内産業などの広範囲に及ぶ事業となり、
これまでの公共事業の枠を超えた影響を及ぼすであろう。