日本国では、経済のデフレ状態が続き、物価がほとんど上昇しない代わりに、賃金は低空飛行が続いている。平均賃金でみると10年前は440万円程度であるが、現在では420万円ほどに下がっている。
ところが、過去日本国は成長率10%というとんでもない経済成長を実現し、奇跡の復興といわれ世界中の国から賞賛されたのである。この極端な差が、世代間の経済格差を生んでいる。
当事者であれば、以下のことに同意してもらえると思う。
60歳以上の高齢者は、働けばいくらでも稼げる。稼げないのは努力が足らないからだという。40歳以下の若者は、働いても働いてもちっとも生活が楽にならないという。これは、60歳以上の高齢者よりも40歳以下若者の能力が劣っているからではない。国家の政治戦略、経済政策の問題である。そして、このことが日本国の若者が政治や国家の将来に不安をもつ遠因となっている。それゆえ、世代間格差による政治の不均衡要因を除き、将来の発展に寄与できる方策を発見した人物がいるならば、その者は素晴らしい功績をたてた人であるから、国家の保護者として銅像を設置するに値するであろう。
だが私の目的は、ただ単に若者のための政治を取り戻し、将来性のある施策を実現できる基盤をつくるにとどまらない、より広義の目的は、より公平な民主主義の社会を実現することにある。
私は数年間、この重要な問題について思いを巡らし、他の方々の、様々な世代間格差対策の方策を慎重に分析していった。
最低賃金の引き上げ、選挙開始年齢の引き下げ、働き方改革等、どれも効果は限定的で世代間の格差が是正されてるとはいいがたい。
私の提案は、若者にもっと政治に参加してもらい長期的なビジョンにそった国家政策を実行してもらうというものである。この提案を実行すれば、デモや陳情を繰り返すことなく、若者の声を政治に届けることができるのだ。
私の提案には、もうひとつの大きな利点がある。それは、より公平な民主制度を実現できる可能性があるということである。これまでも、人種、性別、民族、宗教等の様々な少数意見を公平、平等に扱うための是正処置がなされてきた。しかし少数意見を是正すること、そのこと自体が不公平であるとの指摘は避けられない。そこで、この提案により、これまでの民主制度をより現実的な制度へと発展させることが可能である。
まず我が国の現状を整理する。
2014年の国政選挙の有権者数は、下記のとおりである。
20歳から29歳 1209万人
30歳から39歳 1536万人
40歳から49歳 1760万人
50歳から59歳 1573万人
60歳から69歳 1863万人
70歳以上 2455万人
2014年の国政選挙の有権者割合は、下記のとおりとなる。
20歳から29歳 11.6%
30歳から39歳 14.8%
40歳から49歳 16.9%
合計比率 43.3%
50歳から59歳 15.1%
60歳から69歳 17.9%
70歳以上 23.6%
合計比率 56.6%
日本国においては、すでに若者は政治に参加できない時代になっている。有権者の比率で言えば、50歳以上が有権者全体の56%になってしまった。
過半数の多数意見を是とする民主主義の原則から言えば、50歳未満の声は政治には届かないことになる。
例えば、100億円の予算の使い道を議論する場合、60歳以上の医療対策に割り当てるのと、若者の賃金と労働環境の改善に割り当てるのでは、自ずと結果はあきらかになる。
これは、政治家個人の責任ではない。政治家は、民衆の多数意見を政治に反映させるために存在するのであれば、50代以上が過半数なのだから、高齢者の医療対策等に100億円を使うことは正しい判断である。
日本国において抜本的な少子化対策等が進まないのは、まさに若者の意見が政治に届かないからにほかならない。何度も繰り返し言うが、これは政治家の責任ではない。若者の賃金と労働環境の改善が後回しにされるのは、それが少数意見だからである。
そこで、私は謹んで以下の施策を提案する。おそらく誰も異議は無いものと思われる。
30歳未満の有権者は1人につき3票の投票権を与える。
本提案により、政治家にロビー活動することなく若者の意見を政治に反映させることできる。若者は、高齢者のつけを払うことなく自らの未来を切り開く政策を実現できる。
本提案による有権者割合 20代を1人3票に修正する。
20歳から29歳 28.3%
30歳から39歳 12.0%
40歳から49歳 13.7%
合計比率 54.0%
50歳から59歳 12.2%
60歳から69歳 14.5%
70歳以上 19.1%
合計比率 46.0%
有権者の比率は、50歳未満が有権者全体の54%になり過半数を獲得できる。
ところで、最近になって真の愛国者として尊敬される人物から、私の提案をより良くするためのアイデアをいただいた。
彼が言うには、80歳以上の高齢者は選挙権を与えないようにすれば、よりよい提案になるという。
つまり若者の有権者を増やすだけでなく高齢の有権者を減らすようにすればよいというのである。そもそも、きちんと政策や理念を理解したうえで投票を行っている高齢者はどれほどいるのだろうか? 平均してあと数年しか生きられない人の意見を聞いて、その政策が実現できた時にはその人はいないというのでは、その意見を聞く意味があるのだろうか? このような点を考えれば平均寿命以上の高齢者の意見は無視したほうがよいというのである。
選挙は毎年あるわけではないので、選挙のある年、もしくは前年に発表された平均寿命を元に、それ以上の高齢者は投票券を送付しないようにする。2017年を例に取れば、その年の日本人の平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.26歳。つまり男性は81歳、女性は87歳まで、それを超えた年齢の者は選挙権を失う。
しかし、この尊敬される愛国者のアイデアはまさに敬意を払うべきものであるが、必ずしも彼の考えに賛成するわけではない。
というもの、平均寿命という数値があまり正確でないということである。「平均寿命」とは、「実際に亡くなった時の年齢の平均」ではなく、「その年に生まれた赤ちゃんが、平均的に生きられるであろう年齢」である。つまり2017年の平均寿命は、2017年の時の高齢者のための数値ではなく、2017年に生まれた子供に対して意味を持つ数値である。であるので、このように根拠の少ない数値を元に民主主義の正当な権利を制限するのは理屈に合わない。
もちろん平均寿命を基準とせず、85歳なら85歳と決めてその年齢以上の高齢者を選挙から除外するということも考えられよう。
しかし長年国家に貢献してきた高齢者に対し、年をとったからといって社会から仲間はずれにするのは日本の「村八分」の文化にそぐわない。日本は歴史的に「村八分」という伝統を引き継いでおり、コミュニティに損害を与える人や役に立たない人を村から追い出してきた。しかし追い出すと行っても完全に排除したり無視するというのではなく、二分つまり2割程度は、きちんと社会の一員として同等に扱ってきた。
この二分というのが、選挙と盆踊りである。つまり日本では、どんな人でも選挙から排除してはならないのである。
もちろん高齢者が自ら選択して選挙権を放棄するなら問題はない。その場合は、新たに制度化する必要はない、選挙権を放棄するなら投票所に行かなければいいだけである。
話がかなり脱線してしまった。本題に戻る。私の提案の長所をみると、明らかに最も重要視されるべき点が数多く存在する。
第1に、20代が選挙において最も政治に影響力のある世代となり、政治家は若者の意見に沿った政策を実行するようになる。
第2に、本提案の実現するための費用が安価ですむことである。有権者も被選挙人も、これまでと同じような選挙活動、選挙行動でかまわない。また若者世代も、政治家に対し無駄なロビー活動をしなくてすむ。
第3に、20代の投票率をあげることができる。なぜなら、影響力を行使できることを実感できるからである。
3票を同じ人に投票してもよいし、1票を3人に投じてもよい。これまでの選挙予測が当てにならない、まさに真剣選挙のキャスティングボードを握れることになる。
第4に、本音と建前で票を分け合える。地域として付合い上どうしても佐藤さんに投票しなければならないけど、政策的には塩田さんに投票したいとすれば、佐藤さんにしがらみ1票、塩田さんに応援2票投じることができる。
第5に、政治家の固定化を防止できる。これまでの政治家に必要なのは、地盤、看板、かばんである。
政策や実行力は政治家には必要ない。だから、地盤、看板、かばんを引き継いだ政治家が延々と当選し続けてしまう。しかし本提案を実現すれば、少なくともしがらみを超えた投票が可能となるため、候補者の実力で若者の共感を集められれば、これまで以上に新人の当選確率も上げられる。
この他にも多くの利点が挙げられるだろう。たとえば、日本国における女性の地位低下、政治参加の低さを先進国並みに引き上げるために女性に1人2票与えてもよい。こうすれば、女性の政治家は今の倍程度には増えるであろう。さらに、20代の女性は、若者3票と女性2票で合計6票とすれば、女性の子育て支援、少子化対策の政策は1年もたたずに実現できるであろう。話を簡潔にするために、これ以上は省略する。
私には、この提案に対して異議申し立てがなされるなどと考えることができない。
多くの人々には、ぜひ次のことを認めていただきたい。民主主義の原則からいって特定の人に復数票を割り当てるのは不平等、不公平ではあるが、現在行われている選挙制度そのものが人為的に不公平な制度ということである。以前は鳥取選挙区の有権者は兵庫選挙区の有権者の5票分の政治力を持っていた。最高裁判所も「法のもとに平等の原則に反する」ということで違憲判決がでている。だが投票結果は有効で、選挙制度は選挙後少々改善されたに過ぎない。不公平な状態でも選挙をして結果が出てしまえば有効ということである、また、これまでにも特定の候補者に有利になるように意図的に選挙区を設定した例もある。
私自身について言えば、長年にわたって無益で無駄で非現実的な考えを提案することに疲れきってしまった。ついに人生を諦めかけた時に、幸いにもこれまでに述べた提案を思いついたのである。これは明らかに斬新で、現実味があるから、これこそ真に価値ある試みとも思えるところがある。費用はほとんどいらず、国家の将来をそれを担う若者世代に委ねることができる。
私は、良心に賭けて、この提案に関して何ら利害関係が無いことを明言する。ただ日本国の将来の発展を願い、それを阻害している世代間の不平等を改善すること以外に何ら関心を持っていない。私は、30歳以上であるから、したがって3票を投票することができない。